生活習慣病 気になるその治療方法について解説します!

健康予防

 以前は「贅沢病」や「成人病」とも呼ばれていた生活習慣病。日本人の三大死因であるがんや脳血管疾患、心疾患はすべて生活習慣病が関連している病気です。

 生活習慣病は予防も大切ですが、発症した後は適切な治療を行うことが重要になります。では、具体的にどのような治療を行っていけばよいのでしょうか。

 今回は、生活習慣病のおもな治療方法である食事療法と運動療法、薬物療法の3つについて詳しく解説します。





| 生活習慣病に関連する病気

 生活習慣病と呼ばれる病気には、おもに次のものがあります。

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • がん
  • 動脈硬化

 高血圧とは、血圧が 140/90mmHg以上ある状態が続くことです。20歳以上の日本人のうち、2人に1人は高血圧だといわれています。遺伝も関係していますが、食塩の過剰摂取も高血圧の大きな原因です。

 そのため、高血圧を予防するためには食塩の摂取量を成人男性で1日7.5g未満、成人女性で6.5g未満にするよう、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によって目標が設定されています。

 糖尿病は、血糖値が高い状態が続く病気のことです。慢性的に血糖値が上昇した状態が続くと、血管に負担がかかってボロボロになっていきます。その結果、神経障害や網膜症、腎障害などの合併症が起こりやすくなるため、注意が必要です。遺伝的要因のほか、食生活や運動習慣などが原因で発症します。

 脂質異常症とは、血液中の脂質の値が基準値より外れた状態が続くことです。悪玉であるLDLコレステロールは多すぎること、善玉であるHDLコレステロールは少なすぎることが問題となります。

 意外かもしれませんが、がんや動脈硬化も生活習慣病の一種です。国立がん研究センターは、日本人ががんを発症する要因として喫煙や飲酒、塩分摂取などを挙げています。

 動脈硬化は血管の弾力性が失われた状態のことで、高血圧や脂質異常症などが原因で起こる病気です。このほか、喫煙や運動不足なども関係しています。


| 生活習慣病の治療方法

 高血圧や糖尿病、脂質異常症は食事療法や運動療法、薬物療法によって治療を行っていきます。高血圧の場合はまず塩分量を抑えたり飲酒や喫煙を控えたりなど生活習慣の是正を行うことが基本です。

 1か月ほど生活習慣の見直しを行い、それでも血圧が高い状態が続けば薬物療法が行われます。あわせて食事療法や運動療法なども行っていくことが大切です。

 糖尿病や脂質異常症も、同様に生活習慣の見直しを行いつつ、症状に合わせて薬物療法を行っていくことがほとんどです。

 がんの場合は、食事療法や運動療法はがんの予防にはつながるものの、治療には大きな効果がありません。そのため、 薬物療法を行うことが多いです。場合によっては手術で病変を取り除くこともあります。

 動脈硬化の場合は血液をサラサラにする薬を使ったり、脂質異常症や高血圧の治療をしてうまくコントロールしたりしていくことが大切です。


| 食事療法

 食事療法とは、食生活を見直すことで生活習慣病の改善をしていくことをいいます。生活習慣病の種類によって具体的に食生活をどう見直すかは変わってきますが、次のようなことを行うケースが一般的です。

  • 塩分摂取量を控える
  • 飲酒量を控える
  • 適切なカロリー摂取量を心がける
  • 食べ過ぎに気をつける
  • 飽和脂肪酸を摂りすぎないようにする

 高血圧の場合は、 塩分摂取量の制限がとても重要です。成人男性で1日7.5g未満、成人女性で6.5g未満が目標値となっていますが、日本高血圧学会はすでに高血圧を発症している場合、塩分摂取量を1日6g未満にするよう推奨しています。

 飲酒は血圧を上げたり中性脂肪を増やしたり、時にはがんの原因ともなるので要注意です。口腔がんや咽頭がん、食道がんや肝臓がんなどの原因になることがわかっています。

 過剰なカロリー摂取や食べ過ぎは、糖尿病や脂質異常症を招きやすいので注意しましょう。バラ肉やひき肉、バターやラードは飽和脂肪酸の取り過ぎを招き、LDLコレステロールを上昇させる原因です。飽和脂肪酸ではなく、魚に多く含まれる不飽和脂肪酸を多く摂るように心がけましょう。


| 運動療法

 運動療法とは、体を動かすことで病気の治療を行うものです。高血圧や糖尿病、脂質異常症などは運動不足が発症の一因となることがわかっています。

 運動と聞くと「自分にできるかな?」「苦手だから無理かも」と思われる方がいるかもしれません。しかし、簡単な運動でOKなので安心してください。運動療法を行う場合は、 歩行や軽い有酸素運動を行うようにしましょう。

 高血圧の治療を行う場合、1回10分以上の運動を1日の 40分以上行うことが推奨されています。運動後も血圧が低い状態が持続するため、できれば単発での運動ではなく、毎日続けて定期的に行うようにしてください。

 糖尿病の改善を目的とする場合は、中等度の強度で体を動かしましょう。50歳未満の方なら心拍数が100~120拍/分、50歳以降の方なら100拍/分になる程度が目安です。

 脂質異常症の場合も中等度の運動が推奨されています。また、筋力トレーニングをあわせて行うのも効果的です。余裕がある方は有酸素運動にプラスして、ダンベル運動や腕立て伏せ、スクワットなども行ってみてください。


| 薬物療法

 薬物療法とは、薬を使って症状を抑えていく方法です。薬剤療法とも呼ばれます。高血圧の場合は、降圧剤と呼ばれるものや漢方薬を使うことが一般的です。カルシウム拮抗薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬などいくつか種類があるため、患者さんの年齢やほかの病気、血圧の状態に合わせて適切な治療薬を選択していきます。

 糖尿病の治療では、インスリンを注射したりインスリンの分泌を促進させる薬を使ったりして血糖値をコントロールしていくことが基本です。いつどのタイミングで血糖値が上がりやすいのかに合わせて薬の種類を変え、血糖値が急上昇しないようにしていきます。

 脂質異常症では、異常値が出ている脂質の種類に応じて薬も選ばなければなりません。中性脂肪やLDLコレステロールを低下させ、HDLコレステロールを増加させるフィブラート系、コレステロールの合成を抑制するスタチン系の薬剤などが用いられます。

 動脈硬化の場合は、動脈硬化そのものを治す治療はないため、再び血管が詰まらないように薬を使ったり、手術をして詰まりを改善したりすることが多いでしょう。

 がんは進行度や範囲、深さなどによって手術を行ったり薬を使ってがんを小さくしたりなど、さまざまな治療が行われます。


| 生活習慣の予防方法

 生活習慣病を予防するためには、日頃から 食生活と運動に気を使うことが大切です。

  • 食べ過ぎに注意して3食きちんと食べる
  • 喫煙をしない
  • 飲酒量を控える
  • 1日7~8時間程度の睡眠を取る
  • 適正な体重を維持する

 食べ過ぎや喫煙、飲酒を控えるのはもちろんのこと、睡眠をしっかり取ることも予防につながります。実は、生活習慣病の患者さんでは、睡眠障害をもっている方が多いのです。寝不足になると、食欲を抑えるレプチンというホルモンの分泌量が減り、さらに食欲を亢進させるグレリンの分泌量が増えるため肥満になりやすくなります。

 肥満は高血圧や糖尿病、脂質異常症のリスク因子でもあるため、睡眠障害は生活習慣病と大きな関係があるのです。人によって適切な睡眠時間は異なりますが、1日7~8時間を目安に睡眠を取るようにしましょう。


| まとめ

 生活習慣病の治療方法には、大きくわけて食事療法と運動療法、薬物療法の3つがあります。まずは食事療法と運動療法を行い、それでも数値が改善しなければ薬物療法を始めることが多いでしょう。がんの場合は食事や運動での改善が難しいため、医師と相談して治療方針を決めていくことが基本です。

 生活習慣病は薬だけの力で治していくものではありません。名前の通り生活習慣も関与しているため、日頃の生活を見直すことも大切です。  


出典:国立がん研究センター ”科学的根拠に基づくがん予防ーがんになるリスクを減らすためにー“      がん情報サービス
   厚生労働省 ”アルコールと癌(がん)“ e-ヘルスネット
   厚生労働省 ”高血圧“  e-ヘルスネット
   厚生労働省 ”脂質異常症“ e-ヘルスネット
   厚生労働省 ”睡眠と生活習慣病との深い関係“ e-ヘルスネット
   厚生労働省 ”脂質異常症を改善するための運動“ e-ヘルスネット
   厚生労働省 ”糖尿病を改善するための運動“ e-ヘルスネット
   厚生労働省 ”運動療法“ e-ヘルスネット

文/岡本 妃香里

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