家族が認知症になった時の対応方法について、お教えします!

健康予防

 ご家族に認知症の方がいる場合、大変な毎日を送っていることかと思います。イライラがたまり、時にはやり場のない気持ちに追い込まれてしまうこともあるでしょう。

 認知症のご家族と過ごす場合は、上手な対応方法を知っておくことで精神的・身体的な負担を減らすことが可能です。今回は、認知症の方と接するときの正しい対応方法について紹介します。





| 認知症とは

 認知症とは、認知機能が低下することで記憶力や判断力などが鈍り、日常生活に影響が出ている状態のことです。日本では 65歳以上の5人に1人が認知症だといわれています。

| 認知症と物忘れの違い

 年齢を重ねると誰でも物忘れは多くなりますが、認知症と物忘れには大きな違いがあります。物忘れの場合は「昨日の晩ご飯になにを食べたっけ?」となりますが、認知症の場合は「昨日は晩ご飯を食べていない」と、食べたこと自体を忘れてしまうのです。

 さらに、自分の記憶がなくなっていることに気がついていません。本当に晩ご飯を食べていないと本人は思っているのです。また、認知症は治療を行なわなければ徐々に症状が進行していきます。

  認知症 物忘れ
物忘れの範囲 食事をしたことは覚えているけど、何を食べたかを思い出せない 食事をしたこと自体を忘れる
物忘れの自覚 自覚している 自覚していいない
症状の進行 進行しない 進行する

| 認知症で見られるおもな症状

・記憶障害

 数分前のことを思い出せず、何度も何度も同じことを聞いたり繰り返し同じ行動をしたりします。新しい記憶はすぐに忘れてしまいますが、昔の記憶は残っていることが一般的です。

・見当識障害

 今日が何月何日なのか、季節はいつなのかなどがわからなくなります。外に出たものの道がわからず、迷子になってしまうのもよく見られる症状です。

・理解力や判断力の低下

 すぐに物事を判断することが難しくなり、自販機や銀行ATMの使い方にとまどい時間がかかってしまうことがあります。同時に複数のことをこなすのも苦手です。

・実行機能障害

 まだ予備があるのに同じ物を何度も購入したり、計画的に物事を進めることが難しくなったりします。

・心理状態の変化

 ものを盗まれたという「もの盗られ妄想」はよくあるものです。自分で置いた場所を忘れているだけのことが多いのですが、本人は盗られたと思い込んでしまいます。


| 認知症の種類

 認知症にはさまざまな種類があります。なかでも次の4つは「4大認知症」としてよく知られているものです。

| アルツハイマー型認知症

 認知症のうち、アルツハイマー型認知症が約7割を占めています。原因についてはまだわかっていない部分もありますが、 アミロイドβというタンパク質が脳に蓄積することや、タウというタンパク質が異常に凝集して作られた神経原線維変化が関係しているという説が有力です。

| 血管性認知症

 血管性認知症とは、脳梗塞や脳出血など脳の血管障害がきっかけで起こる認知症のことをいいます。脳がダメージを受けた部分のみの機能が低下するため、できることとできないことがはっきりわかれる 「まだら認知症」になることが特徴です。

| レビー小体型認知症

 レビー小体というタンパク質が蓄積することで起こります。パーキンソン症状といって体が固くなって動かしづらくなる症状が見られやすく、転倒の危険性が高いため注意が必要です。

| 前頭側頭型認知症

 前頭葉や側頭葉などの神経細胞がダメージを受けることで発症します。同じことをくり返したり、感情が鈍くなったりなどの症状が代表的です。


| 家族が認知症になった時の対応方法5選

 認知症のご家族に対してどう対応すべきかは、その方の性格や症状により異なります。ここでは一般的な対応方法について紹介していますので、こちらをヒントにお互いが過ごしやすい毎日を作れるような工夫をしてみてください。

| 本人のペースに合わせる

 ご本人も「以前のようにはできないことが増えた」と自覚しています。しかし、記憶がすぐになくなったり複数のことを一度にできなくなったりするため、何をするにも行動がゆっくりになってしまうものです。ご自身でも思うようにできないことについて悩んでいることが多いので、急かしたりと責めたりしないようにしましょう。

| 発言を認める

 「ものを盗られた」「まだご飯を食べていない」など、常にいろいろなことを言われるかと思います。誰も盗んでないしご飯はさっき食べたよとイライラしてしまう気持ちはわかりますが、叱るのは逆効果です。

 叱ることで自分だけ仲間はずれにされている、ご飯すらもらえないと思ってしまいます。「盗られたんだね、探そうね」「ご飯を準備するね」など、相手の発言を認めてあげてください。

| トイレに失敗しない工夫をする

 失禁したり、トイレの場所がわからずウロウロしてしまったりする場合は、失敗しづらい環境作りをしてみましょう。お手洗いに「トイレ」と大きく書いた貼り紙をしたり、定期的にこちらから「そろそろトイレに行く?」と声をかけたりしてみると失禁の回数が減る場合があります。

| 幻覚が出たら話を合わせる

 いるはずもない人がそこにいる、いないはずの虫が見えているなどは認知症の方ではよくある症状です。しかし、そんなのはいないよと返事をするとご本人は馬鹿にされていると感じてしまいます。

 もし幻覚があるようでしたら、「宅配の人が来ていたみたいだよ」「虫がいるの?追い払わないとね」など話を合わせてあげてください。

| 外に出ようとするときは一緒に行く

 認知症の方は、安心できる場所を探して慣れた場所や長く過ごした場所へ自然と向かおうとする傾向があります。理由もなく突然どこかへ出かけようとするのはそのためです。

 1人で外に行くと迷子になることがあるため、どこかへ行きたそうにしている場合は「気分転換をしたいので一緒に行きましょう」などできるだけ声をかけるとよいでしょう。


| 認知症の方へのNGな対応例5選

 認知症の方への声かけや対応を間違えると、攻撃的になったりかえって症状が悪化したりします。次のような対応はご本人も嫌な思いをしてしまうため、できるだけ避けるようにしましょう。

| 物忘れを指摘する

 「ご飯はさっき食べたでしょ?」「トイレはまだ行ったばかりでしょ」など、物忘れを指摘するような声かけはよくありません。本人にはご飯を食べた記憶もトイレに行った記憶もありません。それを否定すると、自分は嫌がらせを受けていると感じてしまいます。

| 強い口調で会話をする

 認知症の方を見ながら毎日を過ごすのはとても大変なものです。ストレスを抱えるなといわれても難しいことがほとんどでしょう。しかし、「ダメって言ったでしょ!」「なんでそんなことするの!」と口調を強めても、本人は「悪いことはしていないのになぜか怒られた」と感じます。

| 無視をする

 何度も同じことを聞かれると、答えるほうも疲れてしまうでしょう。だからといって無視をすると、本人は孤独や不安を感じてしまいます。孤独や不安がきっかけでストレスがたまり、暴力的な行動に出るケースもあるため、簡単にでもいいので返事をしてあげてください。

| 部屋に閉じ込める

 勝手に冷蔵庫をあさったり深夜徘徊したり、認知症の方の介護は本当に大変なものです。問題を起こされるのを防ぐために、部屋に閉じ込めていたくなることもあるかもしれません。ところが、閉じ込めることで本人は余計に外に出ようとする気持ちが高まります。

| 脳のトレーニングを強要する

 初期の認知症の場合、脳のトレーニングを行って少しでも症状の進行を止めようとするケースが見られます。ところが、実は脳のトレーニングも逆効果であることが多いのです。トレーニングを続けることで段々と「昔よりできないことが増えた」と本人が実感し、ひどく落ち込んでしまうことがあります。うつ病を引き起こす引き金にもなるため、脳のトレーニングを強要するのは避けたほうがよいでしょう。


| 認知症の方への対応方法まとめ

 認知症の方と過ごすときは、次の5つのポイントを意識しながら対応をすることが大切です。

  • 本人のペースに合わせる
  • 発言を認める
  • トイレに失敗しない工夫をする
  • 幻覚が出たら話を合わせる
  • 外に出ようとするときは一緒に行く

 相手を否定しないことを意識して過ごすことが基本となります。対応を少し変えるだけで認知症の方の攻撃性が減ったり、症状が落ち着いたりするケースも少なくありません。治療によって症状の進行を遅らせることもできますので、医療の力も借りながらうまく対応していきましょう。


出典:厚労省 ”認知症“ 知ることからはじめようーみんなのメンタルヘルスー

文/岡本 妃香里

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