膝関節症にはどのような症状があるの?症状について解説します!
お年寄りになると体の節々が痛くなることが多いですが、その中でも膝を痛めている方は多いのではないでしょうか。特に膝関節は人体の関節の中でも大きな負荷がかかる部位であり、歩くなどの動作時は体重の3~5倍もの負荷がかかると考えられています。また、スポーツによる外傷の中でも膝を痛める人は多いので、膝の痛みはお年寄りだけでなく若い人にとっても身近なものであると思います。今回の記事では、そのような膝の痛みを呈する膝関節症に関して説明します。
| 解剖
まず、膝関節症について説明する前に膝の解剖について話していきます。
そもそも関節は骨と骨をつなぐ役割を果たしていて、膝関節は太ももの骨である 大腿骨(だいたいこつ)とふくらはぎの骨である 脛骨(けいこつ)・ 腓骨(ひこつ)とをつないでいます。大腿骨は表面が凸上に突出していて、表面がくぼんでいる脛骨にちょうど良くはまるようになっています。このような構造をした関節を 蝶番関節といい、ドアノブのように一方向にのみ動くことが出来ます。
また触ってみると良く分かりますが、膝関節にはお皿のような骨があり 膝蓋骨(しつがいこつ)といいます。膝蓋骨には太ももの筋肉の負担を軽減し、また膝関節を前面から保護する役割があります。
人体にある関節は勿論骨だけで構成されているわけではありません。骨と骨をそのままつなぐと骨同士がぶつかり損傷してしまうだけでなく、滑らかな動きが出来ません。そのため、骨同士を円滑につなぐために靱帯や軟骨などの軟部組織があります。膝関節の靱帯は4つあり、骨と骨をつないでいます。
半月板は膝関節の中にある軟骨のことです。先述したように、膝関節は歩くなどの動作をするときに非常に荷重がかかります。半月板には、そのような荷重を分散し膝関節への負担を和らげる役割があります。さらに膝関節が滑らかに動けるような役割も担っています。
関節のクッションともいえる半月板などの軟骨が損傷し、最終的には膝関節が変形してしまう病気を変形性膝関節症といい、膝の痛みを呈する疾患の内の多くを占めています。次の章以降で変形性膝関節症について説明していきます。
| 原因
なぜ軟骨がすり減ってしまうのでしょうか。多くの原因は加齢や肥満によるものとされています。加齢により足の筋肉が減ってしまうと膝関節にかかる負担もより大きくなってしまいます。また、膝関節は体重の負担がかかる部位なので、肥満も一つの要因となります。
その他の要因としては外傷により足の骨を骨折してしまうと、正常な構造とは異なる部分が出てきてしまい膝関節にかかる負担が大きくなってしまいます。
| 症状
変形性膝関節症の初期症状として現れるのは、膝を動かし始めた時の違和感で、歩き始めた時や起き上がった時に膝のこわばりや痛みを生じます。これは膝関節の軟骨がすり減って減少しているため、大腿骨と脛骨・腓骨の間が狭くなってしまいスムーズな動きをするのが難しくなるからです。ただし、変形性膝関節症の初めの段階では、しばらく動いていると違和感や痛みはなくなります。そのため、一時的な症状と考えて医療機関を受診しないケースもあります。
さらに症状が進むと、膝の重苦しさや痛みがしばらく動いても改善しなくなります。また膝関節に負担のかかる正座や階段の上り下りが非常に辛く出来なくなる方もいます。この段階では軟骨がさらにすり減ることで、関節の縁から 骨棘(こつきょく)といわれるものが出来て骨の変形が進みます。また、関節は関節包というものに包み込まれていますが、この中で炎症が起こります。それにより黄色の液体が産生されて、いわゆる膝に水がたまるという状態になります。
変形性膝関節症がさらに進んでしまうと、軟骨が完全にすり減って骨と骨が直接ぶつかってしまうため激しい痛みを引き起こしてしまいます。歩くといった日常動作が困難になるため車いすでの移動を余儀なくされる場合もあります。また、自由に外出できないことから精神的ストレスを感じたり、外界からの刺激が減ることで認知機能が低下してしまう場合もあります。変形性膝関節症の名前の通り、骨の変形を呈する疾患ですが、末期の段階になると膝関節だけでなく足全体が変形してしまい極度のO脚などになってしまうこともあります。
| 治療法
変形性膝関節症の治療法としては大きく分けて3つあり、 運動療法・薬物療法・手術療法があります。まず始めの段階では保存治療である運動療法・薬物療法を行います。それでも効果が乏しい場合に考慮されるのが手術療法です。
<運動療法>
変形性膝関節症では膝が痛いため運動量が減ってしまい足の筋肉が落ちてしまいます。そのため、膝関節にかかる負担が増えてしまい、症状が増悪するといった負のスパイラルになってしまうことが少なくありません。その負のスパイラルを断ち切るのが運動療法です。ウォーキングや足の筋肉トレーニングにより膝関節周囲の筋肉を鍛えて膝関節の負担を軽減することが出来ます。また、変形性膝関節症では痛みにより膝を上手に曲げたり伸ばしたりすることが困難になる場合があります。運動療法では膝関節の運動のトレーニングをすることで、失われた膝関節の機能を回復させることが出来ます。
<薬物治療>
薬物治療では変形性膝関節症による痛みを和らげることが出来ます。アセトアミノフェンやロキソニンなどが主に使用されます。他にも内服薬だけでなく湿布などの外用薬や坐剤なども使用されます。また、膝関節にヒアルロン酸を注入する場合もあります。ヒアルロン酸には関節の滑らかな運動を助けたり、外からの衝撃を和らげるなどの効果があります。変形性膝関節症では膝関節内のヒアルロン酸が減少しているので、ヒアルロン酸の注入により症状を緩和することが出来る場合があります。
<手術療法>
症状の段階が初期の場合であれば、基本的に運動療法と薬物療法を併用します。しかし、変形性膝関節症の原因である軟骨は骨や筋肉と異なり再生できないので、一度傷つくと修復されることはありません。そのため、運動療法や薬物療法は対症療法であり根本的な解決にはならないので、症状の改善が乏しい場合は根治治療として手術を選択する必要があります。
手術にもいくつかあり、 関節鏡手術、骨切り術、人工膝関節置換術があります。
関節鏡手術は上記に挙げた中では最も侵襲の少ない治療法です。関節内にある擦り切れた半月板や軟骨などを除去することで痛みを一時的に改善するものです。これも保存療法と同様に根治治療ではないため、変形性膝関節症の初期段階で行われます。
骨切り術は、名前の通り変形してしまった骨を削る治療法です。骨を切ってしまうので、その部分の治癒に時間がかかるといったデメリットはありますが、自分の骨を温存できるため運動制限などがありません。そのため、若い人やスポーツを続けたい方などが対象です。
人工膝関節置換術は高齢で、かつ骨の変形が進んでいる方が対象です。膝関節の一部を削り人工関節に置き換えるため、痛みの原因を除去することが出来ます。関節鏡手術や骨切り術と比較すると侵襲は大きいですが、痛みを完全になくすことの出来る根治治療といえます。
| まとめ
高齢の方にとってなじみのある膝関節症に関して説明しました。症状をしっかりとコントロールするためにも早期発見・介入が必要です。歩くと膝が痛いなど気になる症状がある方は、なるべく早く医療機関を受診するのをおすすめいたします。
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