今日から始めても遅くない!認知症予防
「将来、認知症にならないために今からできる予防をしておきたい」
このようなお悩みをおもちではないでしょうか。認知症の治療は難しいとされていますが、予防する方法はいくつかあります。今回は、認知症を予防するために今日からできる3つのポイントについて見ていきましょう。
目 次
1. 認知症とは
2. 認知症予防のポイント
3. 認知症を予防するための生活習慣
4. 認知症予防に利用できるサービス
5. まとめ
| 認知症とは
認知症とは、脳の働きが悪くなったり病気になったりすることで認知機能が低下し、日常生活に影響が出ている状態のことです。年齢とともに患者さんは増えていき、現在は65歳以上の高齢者のうち5人に1人が認知症だといわれています。
認知症で見られる症状
認知症では、「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」と呼ばれる2つの症状が代表的です。
〈中核症状〉
中核症状とは、物忘れや理解力の低下などのことをいいます。
- 同じことを何度も聞く
- ものをどこに置いたか思い出せない
- 数分前の記憶がない
- 今日が何曜日なのか、何月何日なのかがわからない
- 情報を理解するのに時間がかかる
- 失禁が増える
- 料理の味付けが苦手になる
- 段取りを組んで物事を行えなくなる
- 季節に合った服装を選べなくなる
〈行動・心理症状(BPSD)〉
行動・心理症状とは、中核症状が原因となって起こる二次的な症状のことです。
- 不安を感じやすくなる
- 一人になるのを怖がる
- 気持ちが塞ぎ込みやすくなる
- 今まで好きだったものに興味を示さなくなる
- あるはずもないものが見える
- ものを盗られたと周りを疑う
- 外出先で道に迷って自宅に帰れなくなる
認知症の治療方法
認知症の種類によって改善が期待できるものと、治療が難しいものとがあります。たとえば甲状腺機能低下症やビタミンB1欠乏症などによって起こる認知症は、認知症の原因となっている疾患を根本的に治療することで症状を改善できるのです。
しかし、認知症の原因の7割を占めるといわれるアルツハイマー型認知症は、完全に治す方法がいまだにありません。治療薬はあるものの、症状の進行を遅らせるのみです。
| 認知症予防のポイント
認知症の予防は、 毎日続けて行うことが大事です。数日行ったからといって、大きな予防効果は期待できません。また、人によっては認知症の予防を行うべきではないケースもあります。実際に予防を始める前に、次の3つのポイントを押さえておきましょう。
認知症の症状が出始める前から行う
認知症の予防は、はっきりとした症状が出始める前から行います。年齢による物忘れが出ている程度なら問題ありませんが、数分前の記憶がなかったり何度も同じ質問をしてきたりと明らかに認知症の症状が出ている場合は、予防法によっては控えた方がよいものもあるでしょう。
というのも、認知症の症状が始まってからいろいろとトレーニングを行うと、ご本人が「前よりできないことが少しずつ増えてきた」と実感し塞ぎ込んでしまうことがあるためです。前はできていた運動ができない、人との交流ができないなど、できないことを自覚することが本人にとってマイナスに働くことがあるので注意しましょう。
ただし、予防法によっては認知症の症状を抑える効果が期待できるものもあります。ご本人とうまく話し合いながら行うようにしてください。
無理なく続けられるものを選ぶ
認知症の予防効果は一長一短に出るものではありません。日々の積み重ねによって数年後、数十年後に効果が出てくるものです。続けられないものを行っても十分な予防効果は得られないため、数年単位で負担なく続けられるような予防法を行っていきましょう。
無理強いしない
ご自身の意思によって認知症の予防に取り組むのは問題ありませんが、周りのご家族が「最近、物忘れが多いから」などの理由で無理やり行わせるのは推奨できません。
小さいころに親から「勉強しなさい」といわれて、やる気がなくなった経験はありませんか?これはブーメラン効果と呼ばれる、強要されることでかえってやりたくなくなる心理現象によるものです。ブーメラン効果によって予防を行うことに消極的になる方もいるため、本人の意思を尊重することが大切です。
| 認知症を予防するための生活習慣
認知症の予防で大切なのは、次の3つです。
- 運動
- 食事
- 趣味をもつ
具体的にどのように行ったらよいのかについて、1つずつ見ていきましょう。
習慣的に運動を行う
認知症の多くを占めているアルツハイマー型認知症の発症には、身体活動の低下が関係しているといわれています。フランスのモンペリエ工大学とスペインのバレンシア大学が共同で行った16万人以上の方を対象とした研究では、運動を定期的に行うことでアルツハイマー型認知症の発症リスクが 45%減少することがわかりました。逆に、日頃からあまり体を動かさない方では発症リスクが高まってしまいます。
このことから、習慣的な運動は認知症の予防に効果的であるといえるでしょう。発症前から運動を行うことで、認知症を送らせる可能性があることもわかっています。
まずは 週に2~3回、1日30分以上の運動を習慣化してみましょう。ジムに通ってもよいですし、ウォーキング程度の運動でも構いません。大きな負担とならず楽しく行える運動を続けてみてください。
バランスのよい食事を心がける
メタボリックシンドロームや脂質異常症、肥満はアルツハイマー型認知症の発症リスクを上げることで知られています。
アメリカのコロンビア大学が行った平均年齢76.2歳の方を平均で5.5年間追跡した研究によると、脂質異常症や肥満、高血圧などがある方でアルツハイマー型認知症のリスクが高まることがわかったのです。これらの疾患は、食生活の改善によって予防ができます。
- 肉よりも魚を意識して食べる
- 適切なカロリー摂取を意識する
- 野菜やフルーツなどを摂る
- 塩分の摂りすぎに気をつける
野菜は1日350gを目安に摂取しましょう。塩分の摂り過ぎは高血圧の原因となるため、 男性は1日7.5g未満、女性は6.5g未満を目安に摂取量を抑えてください。
趣味をもつ
年齢を重ねるとついつい自宅にこもりがちになりますが、意識して好きなことに取り組むのも認知症の予防に効果があります。
アメリカのアルベルト・アインシュタイン医科大学が認知症のない75歳以上の方469人についての観察を中央値5.1年にわたって追跡したところ、読書やボードゲーム、楽器の演奏、ダンスなどの余暇活動を行うことが認知症のリスクを減少させることがわかりました。水泳やテニス、なども予防に効果がある ことがわかっています。
いくつになっても夢中になれる自分なりの楽しみをもっておくと、毎日を豊かに過ごしながら認知症の予防を行うことも可能です。
| 認知症予防に利用できるサービス
認知症は予防できるとわかっても、一人でもくもくと行うのは長続きしなかったり、孤独を感じて途中でやめてしまったりすることもあるかもしれません。そのようなときは、認知症予防に効果のあるサービスやイベントを利用してみてはいかがでしょうか。
- ウォーキングツアー
- フラダンス教室
- 料理教室
- そば打ち体験
- 音楽教室
- 英会話教室
など、お住まいの地域でさまざまなサービスやイベントが行われています。無料で参加できるものもありますので、ご友人を誘って楽しむのもよいでしょう。
| まとめ
認知症を発症した場合、完治させることは難しいケースがほとんどです。そのため、今から認知症の予防に向けた取り組みを始めていきましょう。大切なのは定期的に体を動かすこと、バランスのよい食事を心がけること、趣味をもつことの3つです。
運動や食事は高血圧や糖尿病などの生活習慣病の予防にもつながるため、ぜひ習慣にしてみてください。無理なく続けられる予防法を見つけて、元気な毎日を過ごしましょう。
参考: 厚生労働省 ”認知症“ 知ることからはじめようみんなのメンタルヘルス-こころの病気、支援に関するウェブサイト
厚生労働省 “野菜、食べていますか?“ e-ヘルスネット
厚生労働省 “栄養・食生活と高血圧” e-ヘルスネット
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