よく耳にする自由診療とはどのようなものかご紹介します!

再生医療

 皆さんが「お腹が痛くてご飯がたべられない。」、「火傷をしてしまった。」など健康上の問題が生じたときは病院に行くと思いますが、皆さんが医療費のうち何割を負担しているのかは知っていますでしょうか。年齢や収入によっても変わりますが、多くの人は3割負担となっています。しかし、3割負担となるのは私たちが保険診療を受けているときに限ります。

 私たちが自由診療を受ける時は3割負担ではなく全額自己負担となります。このように私たちが医療費として払う費用は受ける医療の種類により異なります。今回の記事では、自由診療と保険診療といった医療制度についてお話していきます。





| 保険診療とは

 まず自由診療についてお話しする前に保険診療について説明していきます。

 保険制度は国によって様々です。例えば、世界一の医療大国とも呼ばれるアメリカでは、日本とは異なり国民全員が入るような保険は存在しません。アメリカで提供されている公的医療保険は65歳以上の高齢者や障害者、低所得者が対象です。これらに該当しない人のほとんどは民間医療保険に入るほかありません。実際に、アメリカ国民の8%は医療保険に入ることが出来ていません。日本だけでなく他の先進国と比較しても、アメリカ国民の医療費は高額であるとされています。

 一方で、皆さんがご存じのように日本には 国民皆保険制度があります。会社員は健康保険に、自営業の人は国民健康保険に、公務員は共済組合といった公的な医療保険に加入しています。この保険により医療費の負担割合は基本的に3割となっています。乳幼児や70歳以上の人など、収入が少なる年代や他の年代と比較して病院を受診する機会の多い人の場合は、自己負担が1~2割となります。さらに、私たちが受ける医療のほとんどは公的医療保険の適応内となっています。そのため、アメリカなどの他の先進国と比較してもかなり恵まれた医療保険制度といえるでしょう。

 さらに国民皆保険制度の他にも日本国民には、医療負担を軽減するような制度が存在し、その制度を 高額療養費制度といいます。高額療養費制度とは、ある月に支払う医療費が一定以上の額となった場合は、上限額を超える医療費が払い戻されるといった制度のことです。公的医療保険の適応になっていて自己負担が3割になる場合でも、手術の内容や抗がん剤など治療の内容によってはかなり高額になる場合があります。そのような場合も、負担額が先述した上限額を超えている場合は、超えた分が払い戻されるようになっているのです。上限額に関しては収入により多少異なりますが、一般的な収入の場合、上限額はおよそ10万円程度になっています。


| 自由診療とは

どのような治療法が自由診療に該当するのか?

 まず、自由診療とは公的医療保険の対象とならない治療法のことをさします。国民皆保険制度の適応になっている保険診療は、効果があるとすでに実証されている一般的な治療法が該当します。一方で、自由診療に分類されているものには、動物実験では効果が示されているもののヒトへの効果に関してはまだ明らかとなっていない治療法や、海外ではヒトへの効果が証明されているが日本での研究はまだ進められていない最先端の治療法などがあります。他にも、人間ドッグのような健康面で問題のない方に対する医療行為も自由診療に該当する場合があります。例えば、以下のような治療法が自由診療に分類されています。

  • 網羅的がん遺伝子検査
  • 一部の免疫チェックポイント阻害薬
  • 自家がんワクチン療法
  • 美容整形
  • 男性型脱毛症(AGA)治療
  • 人間ドッグ
  • インプラント
  • 歯列矯正

保険診療との違い

 自由診療と保険診療の最も大きな違いは患者さんへの 金銭的な負担です。先述したように保険診療の負担は年齢や所得にもより異なりますが、一般的には3割となっています。

 例えば、ある患者さんの1か月の医療費が100万円であったとしましょう。保険診療の場合は100万円のうち3割の30万円を負担することになります。さらに、保険診療の場合は高額療養費制度が適用されます。仮にこの方の年収が370万円~770万円である場合は、高額療養費制度により212,570円が給付されます。その結果、実際に負担することになるのは87,430円のみとなるのです。

 一方で、自由診療を受けた方の医療費が100万円であったらどうでしょうか。自由診療は基本的に全額自己負担となります。また、高額療養費制度も適応されることはありません。つまり、この方は100万円そのままの額を負担することになるのです。保険診療との負担の差は90万円以上にもなるのです。

 また、保険診療は国により治療法毎の値段が決められています。当然のことではありますが、A病院よりもB病院のほうが薬のお金が安いといったことはありません。しかし、自由診療は施設ごとに治療費が異なります。例えば、美容整形の1つである全身脱毛は人気のある治療法の1つでありますが、医療機関ごとに値段が大きく変わります。

混合診療とは?

 混合診療とは、ある一連の治療のなかで、保険診療と自由診療を組み合わせて行い、かつ保険診療の分は公的保険を活用して3割負担とし自由診療の分だけを全額負担するように支払うことで医療費が混合することをいいます。混合診療は禁止されているため、保険診療と自由診療とを組み合わせて受けた場合、医療費はすべて自己負担となるのです。日本で禁止とされている理由は以下の2点が挙げられています。

  • 効果が明らかになっていない治療法が広まることで医療の質が低下する。
  • 経済的な格差により受けられる医療にも格差が生じてしまう。

先進医療との違い

 自由診療と同様に高額の費用が必要となる治療法に先進医療があります。先進医療は

 厚生労働大臣が定める高度な医療技術を用いた治療のうち、公的医療保険の対象外の治療法のことをいいます。先進医療は従来の治療法と比較して効果が期待されている治療法でもありますが、高度な技術や医療器具を必要とするため限られた施設でしか行うことが出来ません。そのため、先進医療の費用は基本的にかなり高価なものになりますし、公的医療保険の適応外であるため全額自己負担です。しかし、先進医療の場合は保険診療と併用した場合であっても、全額負担となるのは先進医療の費用のみになります。この点が自由診療との大きな違いです。

 先進医療として登録されているものには不妊治療の1つである タイムラプスがあります。

 不妊治療では受精卵の凍結保存をすることがあります。ただし、冷凍保存されているといっても1〜2日に1回は受精卵を確認しなくてはならないのです。その際は体外で観察しますが、受精卵にとって体外はストレスのかかる環境であり悪影響が生じる可能性もあります。その問題点を解決するのがタイムラプス撮像法なのです。これを用いることで受精卵が保存されている培養器内での観察が可能になります。受精卵にストレスをかけないだけでなく、より正確な観察も可能になるので妊娠率の向上につながるのではと考えられています。


| 自由診療の注意点

 自由診療は先述した通り、日本での研究により効果が承認されていないものや中にはヒトへの効果がまだ明らかになっていない治療法も含まれます。そのため、高額な医療費を支払ったからといって、必ずしも効果があると限らないことに注意する必要があります。

 また、効果が優れていたとしてもヒトへの安全性が確保されていない治療法も自由診療に含まれます。そのため、まだ報告されていない副作用が現れてしまう可能性もあるのです。自由診療を提供する医療施設が治療における有害事象に対してどのように対応するのかは事前にしっかりと調べておく必要があります。


| まとめ

 自由診療について保険診療と比較して説明しました。医療を普段受けている人も医療制度については詳しくなかった人が多いのではないでしょうか。自由診療にも様々な問題点がありますが、しっかりと調べたうえで自由診療を活用すれば治療の選択肢を増やすことにつながるかもしれません。是非、この記事で自由診療に関する理解を深めて下さい。

文/高橋

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