変形性膝関節症のリハビリ方法について解説します!

再生医療

 一般的に高齢になると様々な病気になりやすくなりますが、その最たる例に整形外科疾患があります。骨をサポートする筋肉は年を重ねるごとに減ってしまうため骨にかかる負担は多くなり、また骨や靱帯などの構造も脆くなるので骨折や関節痛などを呈しやすくなるのです。 

 特に膝関節は歩行時などに必須の関節ですが、体重の負担がかなりかかってしまう関節でもあります。今回の記事では、膝関節痛を呈する変形性膝関節症と、その治療法の1つであるリハビリ療法について説明していきます。

目 次
1. 原因
2. 症状
3. 治療法
4. リハビリ療法
5. まとめ




| 原因

 まず、膝関節の構造について簡単に説明します。膝関節は太ももの骨である大腿骨とふくらはぎの骨である脛骨・腓骨とをつなぐ関節のことです。また、膝関節の前方にはお皿のような骨があり、 膝蓋骨と呼ばれます。関節には骨と骨を円滑に連結させる役割を持つ軟部組織があり、膝関節には4つの靱帯や半月板と呼ばれる軟骨があります。

 変形性膝関節症の原因の多くは加齢によるものです。加齢により膝関節を支える筋肉が減少して膝関節の負担が多くなることや、半月板が弾力性を失うことで半月板がすり減ってしまうことが直接的な原因です。その他の要因として肥満や外傷により膝関節の構造が変化してしまうことも、膝関節への負担を大きくしてしまいます。

 軟骨は基本的に再生することの出来ない組織です。そのため、半月板がすり減ることで、より膝関節への負担が増し、最終的には骨が変形してしまうことを変形性膝関節症と呼びます。


| 症状

 初期の症状として出てくるのは膝を動かし始めた時の違和感です。具体的には立ち上がる時や歩き始める時に膝の違和感が生じます。この時点では半月板がすり減ってしまっているため、膝関節のスムーズな動きにやや制限が加わっている状態です。しかし、初期の段階では動かしている最中に違和感は自然と消えてしまいます。そのため、医療機関を受診しないケースも多いです。

 さらに症状が進行すると、しばらく動いても膝の違和感や痛みが持続するようになります。また、膝関節に負担のかかる階段の上り下りなどの運動が辛くなってしまいます。この段階では半月板の損傷がさらに進んでいるため、膝関節を構成する骨の辺縁に 骨棘(こつきょく)と呼ばれるものが出来て、骨の変形が進行します。さらに、関節の炎症が強くなるため膝に水がたまることがあります。

 半月板の損傷がさらに進行すると半月板が無くなってしまい、骨と骨が直接ぶつかるようになるため非常に強い痛みを生じます。この段階になると、歩くといった日常生活を送るのに必要な動作が困難になってしまうため、車いすでの生活などを余儀なくされます。QOLの低下をきたしてしまい、中には認知機能が低下してしまう方もいます。

 先述したように軟骨は再生することの出来ない組織であるため、症状は徐々に進行してしまい手術などを受けない限りは対症療法しかできません。そのため、予防と早期発見が変形性膝関節症と上手に付き合っていくのに重要なのです。


| 治療法

 変形性膝関節症の治療法は大きく分けて3つあり、 薬物療法・リハビリ療法・手術があります。症状の初期の段階では侵襲の少ない薬物療法やリハビリ療法が選択されて、症状が進んでしまうと手術が選択されるケースが多いです。リハビリ療法に関しては次の章で詳しく説明していきますので、この章では薬物療法や手術について説明していきます。

<薬物療法>

 まず薬物療法についてですが、この治療法は変形性膝関節症を根本的に治療するものではなく症状を抑える対症療法です。

 基本的には痛みを和らげるためにアセトアミノフェンやロキソニンなどの内服薬や湿布などの外用薬が使用されます。変形性膝関節症の初期段階からでも痛みのために運動量が大きく減ってしまう方がいます。その場合、膝関節を支える筋肉も減ってしまうため、膝関節により多くの負担がかかってしまいます。

 その結果、膝関節の痛みがさらに強くなり運動量が減ってしまうというような負のスパイラルに陥ることがあります。これを防ぐためにも対症療法として薬物療法が担う役割は重大です。

 また、ヒアルロン酸を膝関節に注射することも行われています。ヒアルロン酸は膝関節のスムーズな運動をサポートしたり、膝関節が外から受ける衝撃を減らす役割がありますが、変形性膝関節症の場合はヒアルロン酸が減少しています。そのため、ヒアルロン酸を投与することで症状を緩和できるのではないかと考えられているのです。

<手術>

 変形性膝関節症の症状が進行していて根治治療が必要な場合に選択されます。手術といってもいくつかの種類があり、 関節鏡手術、骨切り術、人工関節置換術などがあります。

 関節鏡手術は3つ挙げた中では最も侵襲の少ない治療法です。関節内のダメージを受けた半月板を除去することで痛みを緩和します。骨切り術は変形した骨を削り取るといった治療で、関節鏡手術と比較すると侵襲は大きいです。しかし、自分の骨を残すことが出来るため、手術後の運動制限はありません。最後に紹介するのが人工関節置換術です。

 侵襲は最も多いですが、問題となっている膝関節を人工のものに変えるため根本的な治療になりえます。骨の変形が高度な方や症状の強い方が対象となっています。


| リハビリ療法

 変形性膝関節症の治療においてとても重要な役割を果たしているのがリハビリ療法です。

 予防の観点からはリハビリの有無で症状の進行具合が大きく変わります。また、どんなに良い手術を行っても、術後のリハビリを行わなければ日常生活への復帰は困難となります。リハビリ療法について予防もしくは軽症の方の治療目的の場合と、術後のリハビリ療法について分けて解説していきます。

予防・治療目的のリハビリ療法

 予防や軽症の方の治療目的としてリハビリ療法がもつ重要な役割は主に以下の2点となります。

  • 膝関節をサポートする筋肉を増強する。
  • 膝関節の可動性・柔軟性を改善し膝関節の動きを良くする。

 先述したように、加齢により膝関節周囲の筋肉が減ってしまうと膝関節の負担がより大きくなり痛みが増してしまいます。そのため、より運動量が減ってしまうといった負のスパイラルに陥ってしまいます。これを防ぐためにも予防の時点でしっかりと運動して筋肉を減らさないようにすることが重要です。また、膝関節の柔軟性が乏しいとより膝に負担がかかってしまうため、柔軟性の改善も非常に重要です。

 自宅でも出来る運動でも膝関節周囲の筋肉の増強や柔軟性の改善は可能です。つまり、医療機関に通院する必要もないため、かなり手軽に行うことが出来ます。この観点からもリハビリ療法はとても重要です。

手術治療後のリハビリ療法

 例えば、変形性膝関節症に対して人工関節置換術を行えばすぐに歩けるようになるのかというと、そんなことはありません。手術で取り換えたのはあくまでも関節のみであり、その関節を支える筋肉や骨、靱帯などは手術前の状態を変わりないのです。そのため、しっかりと日常生活を送れるようになるためには筋力トレーニングや関節可動域改善のトレーニングが必須となります。手術すればよくなるのではなく、手術+リハビリが一体となってようやく改善するのです。


| まとめ

 変形性膝関節症とリハビリ療法の重要性について説明しました。膝関節症に限らず、整形外科疾患ではリハビリ療法の占める役割はとても大きいです。リハビリは身近に出来ることも多くありますので、これを機に調べて実践してみましょう。

文/高橋

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