認知症とは?認知症の治療と予防について

再生医療

 現在、日本は超高齢化社会を迎えています。2025年には団塊の世代が後期高齢者となり、65歳以上の高齢者のうち5人に1人は認知症であると予想されています。誰が認知症になっても不思議ではない時代です。

 認知症には様々な症状があり、環境を整えることで今まで通りの生活を営むことも可能です。認知症についての知識を得ることで、ご本人もご家族も不安を軽くする事ができ穏やかに生活を続ける事ができます。

 この記事では認知症の症状や検査、治療、日常生活のことなどをご紹介します。 ぜひ参考になさってください。




| 認知症とは

 認知症とは、脳の病気や障害などにより理解力・判断力などの知的機能の低下がみられ、日常生活に影響が出てくる状態をいいます。

 以下、4大認知症についてご紹介します。

  • アルツハイマー型認知症

 脳の萎縮で起こり、最も患者数が多い認知症です。もの忘れで気がつくことが多く、
 ゆっくり進行します。

  • 血管性認知症

 脳梗塞や脳出血など脳の障害が原因で起こる認知症です。障害を受けた部位によって症状に
 違いがあります。

  • レビー小体型認知症

 神経細胞にたんぱく質が溜まることで起こる認知症です。幻視が特徴ではありますが、
 初期症状にバラつきがあり発見が遅れる事があります。

  • 前頭側頭型認知症

 前頭葉や側頭葉が障害されることで起こる認知症です。
 自分の行動を調整することが難しくなり、人格や性格の変化が見られます。

 厚生労働省によるとアルツハイマー型認知症が認知症全体の68%、血管性認知症が20%であり、認知症のほとんどを占めています。


| どんな症状があらわれる?

 認知症の症状として最初に思い浮かぶのは「もの忘れ」ではないでしょうか。しかし、高齢になると個人差はありますがもの忘れは起こります。年相応のもの忘れなのか、認知症の初期症状なのか判別は難しいのかもしれません。

 判別のヒントとなる簡単な例をご紹介します。

・食事に関して「何を食べたっけ?」とメニューを忘れるのは年相応のもの忘れです。きっかけがあれば思い出します。思い出せずに答えを教えてもらったとしても「あー。そうだった!」と納得できます。

「食べてないよ」と、食べたことを忘れてしまっている場合には認知症が疑われます。

 本人がもの忘れを自覚しているのならば年相応のもの忘れであり、無自覚である場合は認知症の初期症状かもしれません。場所や時間が分からなくなったり、意欲の低下や不安を強く感じている様子がみられることもあります。

 ほかに、外部からの刺激への反応が乏しくなり、表情が険しくなるなどの顔つきの変化がみられる方もいます。あまり笑わなくなったり、怒りっぽくなったりしている様子がみられたらご本人に寄り添い心境や体調の変化はないか尋ねてみましょう。

 認知症を自覚し始める頃、ご本人は大きな不安に包まれます。その時に孤独感や不安感を重ねていくことは認知症を進行させる要因にもなります。


| 病院にいくタイミングは?

 前述したように認知症には様々な症状があります。ご本人の様子や性格をよく知る家族が「今までと何かが違う」と感じることがあるのならば受診をおすすめします。

 認知症は早期発見早期治療がとても大切です。なぜかというと認知症のような症状が見られていても他の病気の可能性があるからです。

 例えば、慢性硬膜下血腫という病気があります。これは転倒などにより、頭をぶつけたあと時間をかけてジワジワと出血が広がり、脳を圧迫することにより認知症のような症状が出現します。高齢になると筋力や瞬発力の低下もあらわれ、転んでしまうことが増えてきます。恥ずかしさから転んだことを隠してしまう方もいらっしゃると思います。 

 その結果、周囲の人に気づかれることなく病気が進行し、治療できる病気を見逃してしまうことになりかねません。認知症のような症状があらわれる病気なのか、認知症なのか判別する事がとても重要です。

 認知症であると診断を受けたとしても、早期に発見することにより進行を遅らせるための治療をしながら生活環境を整え、認知症について学び、対応していく事ができます。


| どこの病院に行けばいい?病院では何をするの?

「お父さん、最近忘れっぽい…。もしかして認知症?」と思った時はどこで診てもらうのがよいのでしょう。

 かかりつけ医がいる方は、まずはかかりつけ医に相談しましょう。もし、他の診療科の受診が必要な場合は、既往歴や治療歴など必要な情報を記載した診療情報提供書が発行され適切な病院を紹介されます。

 かかりつけ医がいない場合はもの忘れ外来や脳神経内科、神経科、精神科などを受診しましょう。

 初診時には問診、認知症検査などがおこなわれます。
 問診では、現在の症状や既往歴、内服薬、今までの様子、現在困っていること、いつから症状があるのか、など質問されます。内科や外科の受診とは違い、ご本人やご家族の言葉も重要な診断材料になります。伝えたいことを忘れないようにメモしておくとよいでしょう。

 認知症検査には神経心理学検査画像検査があります。
 神経心理学検査では、「改訂長谷川式簡易知能検査スケール」「ミニメンタルステート検査(MMSE)」などがおこなわれます。これは簡単な質疑応答と指示どおりの動作ができるかなどを確認する検査です。

 画像検査では、CTやMRIで認知症の要因となる脳の萎縮や脳梗塞などの有無をみます。他の疾患が隠れていないかも確認することができる大切な検査です。


| 認知症って治るの?治療法は?

 残念ながら認知症を完全に治す治療法は今のところありません。症状を軽くし、進行を遅らせることに重点がおかれます。なので早い段階で治療を開始する事が大切です。

 以下に治療法をご紹介します。

  • 薬物療法

 アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症では保険適用が認められている内服薬があります。症状に合わせ、神経細胞内の伝達物質が活発になるように作用する薬や神経細胞の興奮を防ぐ作用のある薬が処方されます。

 吐き気や嘔吐、腹痛、便秘などの副作用もありますので様子を見ながら内服を調整します。
他には、不安が強くあらわれた時には抗不安薬、気持ちの落ち込みが強い時には抗うつ薬、漢方薬、睡眠薬、便秘薬など症状に合わせた薬を使用します。

  • 運動療法

 ご本人の身体能力に合わせた運動をおこないます。転倒予防や生活習慣病の予防に有効です。自分の意思で歩けることは社会とつながる上でも大切なことですので運動はとても有効です。

  • 音楽療法

 音楽を聴く、歌う、簡単な楽器を使用し音を奏でるなど、ご本人が楽しめるようにおこないます。懐かしい音楽に触れることは脳の活性化につながります。

  • 回想法

 過去にしていた仕事の話や思い出の話に焦点をあて、回想することで脳を活性化させ、話に共感受容することでご本人の心を支える目的があります。


| 日常生活について

 認知症になったからといって病人扱いすることなく、ご本人が困っていることをお手伝いするということを意識して生活してください。出来なくなってしまったことを回復しようとする訓練はご本人にとってはつらいことです。今できることを大切にしていきましょう。

 運動療法、音楽療法、回想法など難しく感じるかもしれませんが、日常生活の中で「家族で会話をしながら散歩をする」「好きな音楽に合わせて歌う」「アルバムを見て昔の話をして笑う」なども立派なリハビリです。ご本人もご家族もその人らしい生活ができるようにしていく事が一番です。介護をご家族だけで抱えることはありません。まずは要介護認定を受け、日常生活自立度の判定を受けましょう。

 日常生活自立度は日常生活でどの分野がどの程度自立しているのか、逆に介護を必要としているのかなどを調査し、要介護認定の判定に使います。要介護認定を受け、介護度が決まると介護度に見合ったサービスを受ける事ができるようになります。ご家族も生活がありますのでデイサービスやヘルパーなど組み合わせて利用しましょう。


| まとめ

 高齢のご両親がいたり、自分自身が高齢になると「認知症になったらどうしよう」という思いがあると思います。繰り返しになりますが、早期発見、早期治療が重要です。

 家族に高齢者がいるのならば、日頃からコミュニケーションを大切にし小さな変化を見つけられるような関係でいられるといいですね。それが認知症予防にもつながりますし、認知症の進行を遅らせることにもつながります。

文/田中 はる

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