【レビー小体型認知症】原因や症状について詳しく解説します!

再生医療

 認知症について少しは聞いたことがある人が多いのかもしれませんが、「レビー小体型認知症」という病名を聞いたことがある人は少ないのではないでしょうか。認知症は65歳以上の高齢者のうち、7人に1人が罹患すると報告されており、高齢化が進む日本では国民病の1つといっても過言ではありません。認知症にはいくつかの種類があり、最も多い原因は「アルツハイマー型認知症」です。次に多いのが今回紹介する「レビー小体型認知症」で、これらに「脳血管性認知症」と「前頭側頭型認知症」を加えた4つの疾患を4大認知症とも呼びます。
 先述したように、認知症は高齢者に多い疾患であるため、若い人にとってはあまり関わることのない疾患と思ってしまう方もいると思います。しかし、若年者でも認知症になる場合や自分の両親が認知症を患う可能性は大いにあるため、認知症を理解することはどの世代の人にとっても重要です。今回の記事では、4大認知症の1つであるレビー小体型認知症について解説します。

目 次
1. 原因
2. 症状
3. 検査
4. 治療法
5. まとめ




| 原因

 

 レビー小体型認知症は病名にもある通り レビー小体により引き起こされます。レビー小体は αシヌクレインという線維性のたんぱく質が凝集して出来る異常なたんぱく質のことです。レビー小体が脳のある部位に凝集すると、神経細胞が変性してしまいその部位の担う機能が損なわれてしまいます。レビー小体は脳のあらゆる部位により凝集しうると考えられていて、凝集する部位により様々な症状を呈します。症状に関して詳しくは次の章で説明しますが、認知機能の低下を主とするアルツハイマー型認知症とは異なり多彩な症状をレビー小体型認知症では認めます。


| 症状

 レビー小体型認知症は認知機能障害にも様々な症状を引き起こす病気です。主な症状について1つずつ解説していきます。

<認知機能障害>

 認知機能障害は一般の人が認知症と聞くと、思い浮かべる症状ではないかと思います。親しい人の名前を思い出せなくなる記憶障害や自分が今どこにいるのか分からなくなる見当識障害などがあります。アルツハイマー型認知症では認知機能障害が主な症状となりますが、レビー小体型認知症では後述するその他の症状のほうが目立ちます。症状の程度もアルツハイマー型認知症と比較すると軽度であることが多いので、見過ごされることもあります。

<幻覚>

 レビー小体型認知症の特徴的な症状の1つに幻覚があり、中でも幻視が最も多い症状です。幻視では実在しない見えるはずのないものが見えてしまうと誤って認識してしまいます。そのため、会っていない人を見かけたり、部屋の中にいるはずのない動物や虫を見たと本人は主張します。幻視がレビー小体型認知症の一症状であると知らない人にとって、幻視はなかなか理解しがたい症状の1つであると考えられます。

<レム睡眠行動異常>

 人間は睡眠のリズムとして レム睡眠 ノンレム睡眠を繰り返しています。レム睡眠では体はもちろん休んでいますが、脳は日中と同程度に活動していて記憶の整理や定着が行われていると考えられています。実際、レム睡眠中では人間の目はぴくぴく動いていることが知られており、これをRapid Eye Movementと呼びます。そのため、省略してREM(レム)睡眠と呼ばれているのです。一方で、ノンレム睡眠はレム睡眠とは異なり脳も活動をやめて休息している時間帯です。
 レビー小体型認知症ではレム睡眠の時間帯に足をばたつかせて歩き回ったり、悪夢を見て大声を出すなど異常な運動がみられることがあります。この症状はレビー小体型認知症の初期症状の1つとして知られています。

<パーキンソンニズム>

 パーキンソンニズムは名前の通りパーキンソン病で良く見られる症状で、レビー小体型認知症でも認めることが知られています。パーキンソンニズムは脳内の神経伝達物質であるドパミンの減少が原因の1つとして考えられています。パーキンソン病だけでなくレビー小体型認知症でもドパミンが不足するため同様の症状を呈します。実際に、レビー小体型認知症であるのか、もしくはパーキンソン病に併発した認知症であるのかが医療者でも時に鑑別が難しいです。

 パーキンソンニズムとしては、動きが遅くなったり動かなくなる 「動作緩慢、寡動」や筋肉がこわばる 「筋強剛」、手足が震えてしまう 「静止時振戦」があります。これらの症状により上手く歩けなくなり転倒につながることもあります。

 上記に挙げた4つの症状がレビー小体型認知症の中核症状とされています。この4つの症状以外にも下記のようなものがあると知られています。

<抑うつ症状>

 抑うつ症状では、特に何かしらの要因がないにもかかわらず気分が落ち込んでしまい、行動するのが億劫になってしまいます。中核症状に分類されてはいませんが、レビー小体型認知症の主な症状の1つです。抑うつにより不眠や食欲低下をきたすこともあり、ADLを低下させる要因の1つです。

<自律神経症状>

 自律神経は呼吸や循環、体温調節、排泄など多岐にわたる機能を調節する神経です、レビー小体型認知症ではこの神経の働きが損なわれることがあります。これによりめまいや立ち眩み、便秘や頻尿などの排泄障害を引き起こします。


| 検査

 レビー小体型認知症の診断は前の章で挙げた症状と指標的バイオマーカーという検査結果を用いて診断します。指導的バイオマーカーには以下の3点があります。

 ①SPECT(単一光子放射断層撮影)またはPET(陽電子放射断層撮影)で基底核におけるドパミントランスポーターの取り込みの低下 
 ②MIBG心筋シンチグラフィでの取り込み低下
 ③睡眠ポリグラフ検査による筋緊張低下を認めないレム睡眠

 レビー小体型認知症の4つの中核症状のうち2つを認める、もしくは中核症状の1つを認め、かつ指標的バイオマーカーの1つ以上を認める場合は、ほぼ確実にレビー小体型認知症と考えられる Probable DLBと診断されます。また、中核症状や指標的バイオマーカーのうち1つ以上を満たす場合はレビー小体型認知症が疑わしいというPossible DLBと診断されます。


| 治療法

 現時点でレビー小体型認知症の根治的な治療法は存在しません。そのため、対症療法が行われており、 薬物治療 非薬物療法に分けられます。

 レビー小体型認知症は先述したように様々な症状を呈するため、症状に合わせた薬剤が使用されます。認知機能障害や幻視に対しては抗アセチルコリンエステラーゼ阻害薬が、パーキンソンニズムに対しては抗パーキンソン薬が、抑うつ症状に対しては抗うつ薬が使用されます。

 非薬物療法でメインとなるのは 理学療法です。中核症状の1つであるパーキンソンニズムは体がこわばってしまい転倒することが多くなります。これを防ぐためにも、体をしっかりと動かすトレーニングを行い運動能力の低下を防ぐ重要です。また、自宅の段差を少なくすることや手すりをつけることなども治療の一環をいえます。さらに、中核症状の1つである幻視に対しては、部屋のレイアウトをシンプルにすることや明るさを統一することで減らせるのではないかと考えられています。


| まとめ

 レビー小体型認知症は認知機能障害以外にも多彩な症状を呈するため、理解の得られないことも多いです。しかし、適切な治療をすることで症状の進行を遅らせることが出来ます。また、適切な治療を行うためには周囲の人の援助と理解が必須です。レビー小体型認知症についてしっかりと理解することが適切な医療への第一歩につながると思います。

文/高橋

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