再生医療って何?最近耳にする再生医療について解説します!
医療の進歩は日進月歩であり、様々な技術が開発されて実臨床に応用されています。その中でも特に注目されている新たな治療法に「再生医療」があります。再生医療とは、病気や外傷により失われた臓器や機能を正常な状態に回復させる医療です。2012年に京都大学の山中教授がiPS細胞を作成した功績でノーベル医学・生理学賞を受賞して以来、再生医療という言葉をニュースや新聞などで耳にすることが多くなったはずです。
今回の記事では、そもそも再生医療とは何であるのか、について説明していきます。
目次
1. 再生医療の歴史
2. 幹細胞を用いた再生医療
3. 従来の治療と比較した再生医療の強み
4. 再生医療の応用
5. 再生医療のデメリット
6. まとめ
| 再生医療の歴史
再生医療に関して説明する前に、どのような経緯で再生医療が発展してきたのかについて触れていきます。 現代でも行われている、失われた臓器や機能を修復するという治療で、最も古い治療法は移植です。なんと古代ローマの時代から皮膚の移植が行われていたと記載されている文献もあります。
移植の方法には大きく分けて3つあり、自分の組織を用いる自家移植、同じ種である別のヒトの組織を用いる同種移植、ブタやウシなど別の種の組織を用いる異種移植があります。この方法の中で最も拒絶反応が少なく安全であるとされるのは自家移植ですが、採取する量に限界があることがデメリットでした。
これを解決したのが自家培養表皮という皮膚科領域の再生医療で、1975年に確立されています。皮膚科は他の科と比較するとかなり早い段階から再生医療を臨床に応用できています。自家培養表皮は主に重症熱傷の患者さんに対して使用されます。重症熱傷のように欠損している皮膚の面積が大きいと、自家移植のみでは対応できませんでした。しかし、自分の皮膚を採取し、皮膚の表皮細胞を培養して作成した培養表皮を移植することで、重症熱傷の患者さんの救命率は大幅に改善されました。ただし、この時期に培養できたのは皮膚のような単純な構造をしている組織に限られていました。
より複雑な構造を持つ組織を再生が試みられるようになったのは1980~90年代でした。
この頃に生み出された概念がTissue Engineering(ティッシュ・エンジニアリング)です。 Tissue Engineeringとは患者さんの生きた細胞、細胞が活動するために必要な場所を提供する人工的に作られた材料・素材、細胞や生体に影響を及ぼす生理活性物質の3つの要素を一定期間、適切な環境におくことで人工的に臓器や組織を作るという考えです。この考えに基づいて研究がすすめられた結果、より複雑な構造を持つ組織を再生できるようになりました。しかし、再生できるのは皮膚や軟骨に限定されており、心臓や神経などより高度な機能をもつ臓器の再生は出来ませんでした。
そこで登場したのが幹細胞を用いた研究です。現代の再生医療はこの幹細胞を用いたものであり、これにより今までは再生することの出来なかった臓器の再生医療が始められるようになりました。
| 幹細胞を用いた再生医療
ここでは、幹細胞を用いた再生医療がどのようなものかについて説明します。
まず、幹細胞について簡単に説明します。そもそも、人間の体にある細胞は大きく分けると2種類あり、体細胞と生殖細胞とがあります。
体細胞は皮膚や肺などの各臓器を構成する一般的な細胞のことです。一方で、生殖細胞は名前の通り遺伝情報を伝える細胞のことで、精子や卵子があります。
この2つの細胞の元となるのが幹細胞です。幹細胞には体細胞や生殖細胞と異なり、【自己複製能】と【多分化能】を持ちます。この2つの能力が再生医療に応用されています。また、幹細胞は体性幹細胞、ES細胞、そして山中教授が発見したことで有名になったiPS細胞とがあります。
| 従来の治療と比較した再生医療の強み
研究が進められている再生治療ですが、そもそも従来の治療法と比較してどのようなメリットがあるのでしょうか。
現代の医学の進歩には目をみはるものがありますが、どうしても根治を得ることが難しい疾患がたくさんあります。そのような疾患に対して従来の治療法は症状を緩和する対処療法にしかなりえません。しかし、再生医療により根本的に治療できるのではないかと考えられている難病がいくつもあります。具体例は次の章で挙げますが、再生医療は難病患者さんから非常に期待されている治療法なのです。
2つ目に、従来の治療法と比較して副作用が少ないのではないかと考えられています。先述したように再生医療の1つの活用方法には移植があります。先述した重症熱傷に対する皮膚移植もそのうちの1つです。移植は基本的に脳死の方などの臓器を使用します。免疫抑制剤など副作用を抑える治療薬を使用しますが、拒絶反応といった副作用が起こることがあります。しかし、自分の細胞から作られる幹細胞を利用する再生医療では拒絶反応が少ないのではないかと期待されています。
さらに、他の人の臓器を用いる現代の移植では、圧倒的にドナーが足りていません。特に日本では海外と比較するとドナー不足が深刻です。しかし、再生医療はこのドナー不足も解決できるのではないかと考えられています。
| 再生医療の応用
再生医療はすでに多くの領域において研究が進められています。今回はその中でも、従来の治療では根治が難しいと考えられている、脊髄損傷に関して説明していきます。
脊髄損傷は名前の通り、交通事故などの外傷により脊椎が脱臼もしくは骨折し脊髄が損傷することをいいます。脊髄は身体の運動や感覚などを司る神経です。脊髄は上から順に頚髄、胸髄、腰髄、仙髄、尾髄に分けられていて、各部位ごとに担う機能が異なります。そのため、脊髄損傷では損傷した部位により失われる機能が異なりますが、中には下半身が動かなくなるなど重い症状を呈します。
治療法としては手術とリハビリテーションがあります。手術は更なる症状の増悪を防ぐために行われるものです。また、リハビリテーションは残った機能で日常生活を送れるように訓練するものです。一般的に、一度失われた神経機能を回復するのは非常に困難であり、従来の治療法で根治を得るのは難しい現状がありました。
そこで、脊髄損傷の根治治療として注目されているのが再生医療です。
慶應義塾大学の整形外科ではiPS細胞から生成した神経細胞の元となる神経前駆細胞を損傷した脊髄に移植する研究が行われています。すでに、動物実験では移植により神経が再生し、失われた機能の回復が認められています。実用化されれば脊髄損傷を根本的に解決できるようになるかもしれません。
| 再生医療のデメリット
再生医療は非常に期待されている新技術の1つであり、従来の治療法と比較するとたくさんのメリットがあります。しかし、再生医療には良い点ばかりではなくデメリットもあります。
一つにコストが非常に高いという点が挙げられます。
新規治療の開発には、研究や臨床実験などで多額の費用が必要であるため、新規治療は軒並み高額なものになってしまいます。もちろん、再生医療にも同様のことが言えます。日本は高齢化が進んでいるため、医療費の増大が問題になっています。そのため、多くの患者さんに一律に再生医療を受けてもらうのは難しいかもしれません。
| まとめ
再生医療は、従来の治療では治すことの出来ない病気を根治できる可能性を有していて、非常に期待されている治療法です。
コスト面などのデメリットもありますが、研究が進みより多くの患者さんの助けになる治療が実用化されるのではないでしょうか。今後の展望を期待して待ちましょう。
治療法としては手術とリハビリテーションがあります。手術は更なる症状の増悪を防ぐために行われるものです。また、リハビリテーションは残った機能で日常生活を送れるように訓練するものです。一般的に、一度失われた神経機能を回復するのは非常に困難であり、従来の治療法で根治を得るのは難しい現状がありました。
そこで、脊髄損傷の根治治療として注目されているのが再生医療です。
慶應義塾大学の整形外科ではiPS細胞から生成した神経細胞の元となる神経前駆細胞を損傷した脊髄に移植する研究が行われています。すでに、動物実験では移植により神経が再生し、失われた機能の回復が認められています。実用化されれば脊髄損傷を根本的に解決できるようになるかもしれません。
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